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酒はしづかに飲むべかりけり

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満月

短歌
☆ 満月は 遠く重なり二つ見ゆ
         洗練と野生いずれも憧る


☆ 冴え渡る 平安京の望月と
          今宵の月は 同じ月かは

☆ 運命は かくの如きか 手を打ちて
        ぴしゃりと小蝿 思わず殺す

☆ 院展は 今年も三越 日本橋
       芸術至上主義の 友の日本画光る

☆ 芸術は それ自身が 目的で価値
       さりとて妻子の 糊口の資も要る

☆ 小田急線 向ヶ丘を 過ぐる折り
       「ああ玉杯に」と 口ずさみ居り

☆ タルト焼き 娘は二切れ 持ち来たり
      庭で摘みたる ブルーベリー色よし
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☆ 夏去れば 冬たちまちの きのふきょう
       ゆるゆる秋を たのしむ能わず
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☆ 「欲しければ 何でも買え」と 夫は言う
       おわりそれほど 遠くなければ

☆ 「欲しければ 何でも買え」と 夫は言う
        ダイヤを買はぬ 吾をよみ居る

# by murasakisikibu-s | 2011-10-11 12:15

食物

  短歌       

☆ 澱粉を コスト0(ぜろ)にて 作りうる
        光合成に 神を見たるを

☆ 光合成 人工的な 再現を
         目指す英知に 夢を託しつ

☆ 飢ゑて病む 力なき瞳(め)の子等の映像
        地球儀廻し ソマリアを見る

☆ 美しき 里山ありて 生物の
         食物連鎖 くるくる廻らむ

☆ 蜂蜜も 卵も乳も 生命(いのち)をも
        多くを採らぬが もののあはれよ

☆ 馴染みこし 瑠璃の搾り器 古風なり
        レモン搾れば 香気あふるる

☆ 弟が 土産にくれし マヌカハネー
        ニュージーランドの 蜂蜜は濃し

☆ 行平の 鍋にて粥を たき居れば
        美男の業平 思はするかな

☆ くれなゐの 花もやがては 散りゆかん
        知りてか今を 限りなき炎

☆ 年嵩の 従兄の訃報 悲しかり
        聞きたきことの あまたありしを
 

# by murasakisikibu-s | 2011-09-10 17:07

百日紅

短歌
☆ 百日紅 花の命は 長らへて
          秋立ちてなほ 紅の際立つ
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☆くれなゐの薔薇は散りて学友(とも)逝きぬ
         知りたるごとく 山鳩も鳴く

☆ こだはりて 吟味するらし 鴨せいろ
         冷えたる蕎麦に 舌鼓打つ

☆ 炎天の 駅舎に喪服の 人の群れ
         人の生き死に 容赦なかれば

☆ 飢ゑて病む 力なき瞳(め)の子等の像
         地球儀廻し ソマリアを撫づ

☆ 双方が ケイタイ好まぬ 待ち合わせ
         歌など詠みて 来ぬ人を待つ

☆ 住宅の オール電化を 誇りしは
        震災以前の まぼろしの価値観

☆ 老づきて 目指すは目刺しの 土光さん
        良き時代にも 節電説きゐたり
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☆ 両親の 会話はあたかも 漫才と
      評する娘よ 惚けはいずれか?

☆ ぴっしやりと 手を打ち小蝿を 殺したり
       人の不運も かくのごとしや
 
# by murasakisikibu-s | 2011-08-11 14:02

影媛(かげひめ)

短歌
☆ 「影媛」とふ 新作能の ポスターを 
         部屋に飾りて 恋を恋ひたり


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☆ 師の秀歌 古典世界の 基深く
       未読能はぬ 吾愚かなり

☆ 八十歳 されど嬉しや 師の歌評
      「悪くはない」とふ 乾杯したく

☆ 優劣は 競はぬ筈の 老ゆる身に
      かろきねたみの 残りて苦し

☆ 花菖蒲 さかりの色に 染む御苑
       常ならぬ世に 訪ふ人あまた
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☆ 杜ふかく 神宮御苑の 花菖蒲 
       都心にあれど 静やかに咲く

☆ 若鮎に 竹串打ちて 焼きたれど
       苔は匂はで 香魚にあらず
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☆ 水無月の 鮎の姿は 端麗なり
      笹の上にて 黄白色の腹見す

☆ わが庭の 花のすべてが 華やぎぬ
       今年の烈し 気候のゆゑや
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☆ 氷壁を 登攀する人 歩かぬ人
    ホモサピエンスの 範疇むつかし

# by murasakisikibu-s | 2011-07-10 17:28

更衣(ころもがえ)

短歌
☆ 更衣(ころもがえ) なすべき頃ぞ 如何にせむ 
背(そびら)の寒き 暖を取り寝ぬ

☆ 謹呈と 書かれし古書を 購(あがな)ひて
著者と吾との 縁(えにし) を思ふ

☆ わが庭に 咲きし真紅の 薔薇一輪
名はバーグマン 「誰が為に鐘が鳴る」
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☆ くれなゐの 薔薇の新芽の 伸びらかに
色をも香をも 来春たのしぶ

☆ 藤棚の 角(すみ)に 雉鳩巣作りて
みじろぎもせず 卵抱きたり

☆ 雉鳩の 雄は聊か 不器用に
雌雄交互に 卵抱き居る
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☆ 画家たりし 義弟の墓前に 常ならぬ
真紅の薔薇を 供え偲びぬ

☆ 丹念に 墓石(はかいし)磨き居し義弟
逝きて一年(ひととせ)世は無常なり

☆ 一年忌 赤き蝋燭 供へらる
喪服は不要と 僧侶宣ふ

☆ 来年の 三回忌には 親族が
色とりどりの 喪服着るべし

# by murasakisikibu-s | 2011-06-10 18:51